【カンボジア教育視察体験記】

2023.06.26

先般、公益財団法人School Aid Japanの方にお誘いをいただき、約1週間ほどカンボジアの教育視察に伺いました。

カンボジアは、インドシナ半島(東南アジア)の南に位置し、日本との時差は2時間です。また、侵略と内戦の影響で非常に貧しい国であることは間違いありません。訪問においては、日本から目的地であるカンボジアの首都プノンペンまでの空路直行便がないため、今回はバンコク(タイ)のスワンナプーム空港でTransferをして、最終目的地まで約7~8時間ほど要しました。

現在のカンボジアの子どもたちはどのような環境のもとで教育を受けているのか?それが今回の視察にあたっての私のテーマでした。

 

※ポットリアム小学校訪問※

現在のカンボジアでは、10万校もの学校が不足しているそうです。そのような状況下で、日本の有志(民間)の方々が、School Aid Japanの協力を得ながら、学校の建設・寄付をしています。今回、訪問したポットリアム小学校もそのような寄付によって建設された学校です。今回はその贈呈式をかねての訪問です。

学校に到着すると、子どもたちが日本とベトナムの国旗を振って歓迎してくれました。また、カンボジアに古くから伝わる踊りの披露もありました。

今回の贈呈式にあたり、日本側からは、子どもたち一人ひとりに文房具(鉛筆やボールペンのセット)や本をプレゼントに持っていきました。子どもたちの喜ぶ姿は嬉しい限りですが、それとは裏腹に、学校に通えない子どもも多くいるのには胸が痛みます。

 

式典の最後には、感謝状の授与と子どもたちへのメッセージを記帳して、ポットリアム小学校をあとにしました。

 

※SAJ(School Aid Japan)孤児院訪問※

ポットリアム小学校をあとにした私たちは、バスでSAJ孤児院へ移動。ここは、School Aid Japanが建設をして15年の歳月を経た孤児院で、現在82名の子どもたちが共同生活を送っています。

早速、ソビアリー園長や子どもたち、OB・OGの出迎えを受け、さらには、伝統舞踏や伝統楽器で歓迎していただきました。当孤児院出身のOB・OGどうしが結婚して、お子さん連れの人たちもいました。お子さんを見る視線は、すっかり、お父さん・お母さんです。

この孤児院で生活を共にしている子どもたちは、親が蒸発したり、親に捨てられたりして、行き場(生き場)を失ってしまった子どもたちです。そこで、School Aid Japanが立ち上がり、孤児院を建設し、里親を希望する日本人との架け橋をしてきました。

園内には、子どもたち全員の写真、将来の夢、里親の名前・写真が掲示されています。子どもたちの将来の夢を見て驚くのは、「せんせい」「いしゃ」「へいし」「けいさつかん」が多いことです。日本の小学生では、「サッカー選手・野球選手」「ゲーム制作者」「パイロット」「美容師」「保育士」「イラストレーター」「漫画家」など、カンボジアの子どもたちが将来の夢として描かない職業があります。これは、カンボジアの子どもたちがそのような職業に接する機会が無いからといってよいでしょう。しかしながら、カンボジアの子どもの中に「にほんのかいしゃ(ではたらく)」と書いた子がいるのは、日本人としてちょっぴり嬉しい気持ちにさせられました。

このような環境の中で、子どもたちは、優しい里親に大切に見守られて、元気に生活を送っています。

子どもたちの日常では、食事の準備、まき割りなど、自分たちの生活に必要なことは、できる限り自分たちで行います。また、30℃を超える暑さの中でも冷蔵庫がありませんので、食材は大切にみんなで分け合って、その日の分は、その日に使い切るといった生活です。

子どもたちの部屋は、男子棟・女子棟に分かれていて、1部屋に5人ずつで生活を送ります。勉強机は交代で使うといった暮らしです。

  

 

さあ、今日の夕食は待ちに待ったBBQです。子どもたちは大はしゃぎです!

School Aid Japanの理事長(渡邉美樹さん)みずから、肉、魚介、野菜などを早朝に仕入れ、さらに渡邉理事長みずからトングを持って食材を焼き、BBQが始まりました。子どもたち以外にも、園の先生方、OB・OG、日本から訪問した方々が子どもたちと一緒に食事をして、楽しい時間を過ごしました。

BBQのあとは、全員で花火大会です。打ち上げ花火にしろ、線香花火にしろ、子どもたちにとっては経験の少ないものですから、終始大はしゃぎの中で、あっという間に時間は過ぎて行きました。

 

時間が経つのはあっという間で、すでに午後7時を過ぎ、お別れ会のセレモニーが行われ、私たちは、バスへと移動開始です。セレモニーでは子どもたちが私たち一人ひとりに、手作りの花をプレゼントしてくれました。ストローに紙で折った花を挿したものです。子どもたちにとっては、ストローも紙もとても貴重なものですから、それをプレゼントされたときには感無量でした。

さて、いざ本当にお別れというとき、ここで、私の心をえぐるようなことが起こりました。一人の男の子(小学2~3年生くらい)が走ってきて、私にしがみついて泣いて、離れようとしません。単に別れがつらい、寂しいだけなのではなく、やはり、この子たちは孤児なのです。あらためて実感しました。この子をはじめ、多くの孤児たちは、元気に友だちと暮らしていますが、やはり、心の底では親から見捨てられたという思いの一方で、親の愛情に触れたいのではないかと思います。涙をふいてもふいても、何度もしがみついてきます。

後ろ髪をひかれる思いで孤児院をあとにしました。

 

※トモケオ小学校訪問※

カンボジアの子どもたちの多くは、貧しさから朝ごはんを食べられませんでした。さらに、自宅の農作業を手伝ってから学校に行くので、おなかがすいて集中力に欠ける、健康によくないなど、いろいろな問題点が指摘されてきました。

しかし、これは家庭の貧しさのために、食べたくても食べることができないのです。そこで、国連の支援も受け、朝給食の時間(午前7時くらいから)ができたそうです。

私たちは実際にどのように朝給食が実施されているのかを視察したく、宿泊先を朝4時30分に出発し、トモケオ小学校に向かいました。

トモケオ小学校でははじめに、調理器具やコメの備蓄部屋などを見学しました。正直に言えば、調理器具を野外に置くのは、衛生上の観点から大きな問題がありそうです。

おコメはWFP(World Food Programme:国連世界食糧計画)の支援のもと、必要最小限の量を入手しているそうです。このようにして、朝給食によって、子どもたちを飢えから救う活動をしているのです。

カンボジアにおける農業は主たる産業の一つです(GDPの約24%)。作られるおコメは、カンボジアにおける重要な農作物なのですが、貧困のために精米機を買うことができず、結局安い金額でもみ殻付きのおコメを近隣国に送って精米を済ませ、ふたたび高い金額で近隣国から輸入するといった具合です。

さて、実際の朝給食の様子は、子どもたちが自分の容器を持って配膳する方の前に並び、ご飯は自分でよそい、おかずは容器に取り分けてもらいます。食事はいくつかのグループに分かれ、全員がゴザを敷いた上で食べます。

今回の朝給食のおかずは、鶏肉とナスをクリームシチュー風(日本的に言うと)に煮込んだものです。私たちも味見をさせていただきましたが、思った以上に(失礼)おいしかったです。おかずの内容(献立)は、毎日変わるそうです。

食事後は、調理器具や自分の容器を、それぞれが水洗いをします。

 

 

※おコメ支援家庭訪問※

私たちは、最後の訪問校に向かう途中、School Aid Japanが月に10kgのおコメを送っている家庭を訪問しました。

この家庭の家族構成は、お父さん、お母さん、お子さん2人、おばあちゃんの5人です。私たちが到着したときは、お母さん、お子さん、おばあちゃんの3人が出迎えてくれました。家の中は、ほとんど物はなく、服などは折りたたんで、重ねて置いたり、つるしたりしています。また、ちょうど下の写真でおばあちゃんが座っているのがベッドで、家族5人がこの1台のベッドで寝ているそうです。

家の周囲(日本でいう壁?)は、すべてトタン張りです。もちろん安いからでしょうが、厳しい暑さの中、トタン作りの家で暮らすことは、どんなに大変か、想像に難しくはないでしょう。

家の外を見渡すと、屋根から落ちる雨水をトタン板を使って甕に集めています。甕に集めた雨水は、煮沸して使うそうです。6月から本格的に迎える雨季の水は、生活に重要な水資源となります。

カンボジアの人が日本に来て驚くことの一つには、蛇口をひねると水が出てきて、それをそのまま飲むことができることだそうです。私たちが日常生活で当たり前のように使っている水道水が、カンボジアの人々にはとても羨ましい光景なのです。

最後に、出迎えてくれた子どもに、日本から持ってきたお菓子を渡してお別れです。

 

※今後の学校建設のための調査※

今回の視察における最後の訪問校は、School Aid Japanに対して、来年度の生徒数増加に伴って、すでにある教室をさらに10教室分、追加建設してほしいという要望をもつ学校です。カンボジア側の出席者は、小学校の校長先生、中学校の校長先生、地域の教育関係者の方々です。

この増築の発端は、国から「来年は現在の中学生教室を、高校生に使わせる」という通達があったこと、来年度の中学の生徒数増加を鑑みて、どうしても教室数が足りないとのことでした。

これを受けて、School Aid Japanは、学校運営の仕方、学校設備の管理の仕方、先生方の教育に対する考え方、本当に必要とする教室・施設なのかどうかなどを、面談と現場視察を行い、細かくチェックします。

今回は、新教室を増築したとしても、また、すぐに国から「高校生の使用」という通達が出た場合、どのように対応するのか、対応できるのかが大きな課題です。また、School Aid Japanは本当にこの学校にさらに10教室の増築が必要かどうかも入念に調べ、結局のところ、7教室で授業が可能と判断しました。ただし、新設や増設に対しては、とても慎重で、合計3回の調査をすることになっているそうです。次回2回目の面談のテーマは、国の担当者を交えて、今後の学校の在り方の議論を行うことで落ち着きました。

最後に、中学3年生の教室の掲示物と図書館です。

数学の公式は、日本では高校1年生の数Ⅰで履修するものです。子どもたちの勉強に対する意欲を感じることができます。また、図書館の蔵書数の少なさには、やはり国の貧しさが如実に表れている気がします。この学校の子どもたちは、どんな手段で知識や教養を増やしているのかも知りたいところです。

今回の視察を終えて、あらためて感じたことは、簡潔にまとめると、次のようなことです。

人間は生まれてくる国や親を選ぶことはできません。ですから、与えられた環境の中で、必死に考え、行動することがとても重要だと感じました。

他人をいじめたり、攻撃したりする人、文句を口にする人、簡単に諦めの言葉を口にする人、わざとらしく自分を卑下する人・・・このようなことを行ったり、口にしたりすることは簡単です。

このような傾向は、往々にして裕福な環境の中で育ってきた子どもたちに見られる傾向かもしれません。しかし、私たちは本当に努力を積み重ねてきたのでしょうか。何事も他人のせいにせず、自分で受け止め解決策を考えてきたでしょうか。これは、永遠の課題かもしれません。

日本の子どもたちも、世界の子どもたちもこれから未来を切り開く大切な命を授かっています。日本の子どもたちが、厳しい環境下で強く生きている子どもたちと手を取って、未来の世界をつくっていくことを願います。

 

※最後にお願いです※

弊社(プラウ21)では、School Aid Japanを通して、蔵書数が少ない学校に本(絵本、漫画、教育図書 etc)を送る予定です。皆様のご家庭で廃棄なさる予定の本がございましたら、ご寄付をお願いできますでしょうか。弊社にお送りいただけますと、必ず子どもたちの手に届くようにいたします。何卒よろしくお願いいたします。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。


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